1. 若年女性の東京圏流出に「待った!」をかける、
県内就職促進への取組について
愛知県は「日本一の産業県」であり、多くの優良企業が集積している。給与水準も全国トップレベル。東京と比べて平均通勤時間が30分以上短いところも働きやすさのポイント。待機児童数は東京の5分の1と女性が働きながら子育てできる環境も整い、働く女性の旅行・行楽をする割合は全国1位。一日当たりの趣味・娯楽に費やす平均時間は全国5位と、充実した暮らしを送っている女性が多く、住みやすさ・働きやすさなら愛知県!と女性に向けて発信される「あいち女性の活躍促進応援サイト」のPRメッセージに、愛知の魅力を感じてほしいもの。
「女性の皆さん、ぜひ愛知の企業へ!」と声高に若い女性の労働力を求める背景には、長年にわたって本県が抱える人口移動の大きな課題がある。
愛知県は製造業が強いという産業構造ゆえに、男性の転入は相次ぐ半面で、女性が「働きたい」と希望する3次産業関連の雇用機会が少ない。だから、大学卒業後の就職時を含む20~24歳の若年女性は、「ものづくりのイメージが強い愛知では働く場所がない」と、東京圏へと転出していく傾向が続く。
実際に、本県の若い女性は少ない。若年人口20~34歳の年代に占める女性の割合は、男性100人に対し、女性は89.8人と全国平均95.4人を下回り、都道府県別では全国で8番目に女性の割合が低い。この男女人口のバランスの崩れは、男性の未婚率を増加させ、将来の母親候補人口を逃し、少子化に拍車をかける。折しも、本県は我が国屈指の産業県として若い世代の転入超過で長らく人口増加を維持してきたが、昨今は2019年の755万4千人をピークに3年連続で人口減少が続く。このまま進めば、地域の活力に陰を落とすことは必至だと危機感が募る。
そこで、長年の懸案であった若い女性の東京圏への転出超過に歯止めをかけたい本県として、今年度から東京圏へと流出する可能性のある女子大学生に県内企業をPRし、地元就職につなげる取組に力を入れる、と聞いている。
本県では「女性が元気に働き続けられる愛知」の実現に向けて、2013年度から「あいち女性の活躍促進プロジェクト」を推進。これまでに、県内大学の在学生へ就職の志望先を検討するにあたって重視していることや、若年女性の転出超過についてその要因となる女性の意識や行動の把握・分析のためのアンケート調査も実施してきた。
女子学生の傾向は育児休業の取得率が高い企業を望み、出産後も長く働きたいと考える学生が多いよう。愛知県内での勤務を希望する学生は「仕事よりも余暇や家庭生活を優先したい」などワークライフバランスに関する項目が上位で、東京圏での勤務を希望する学生は「仕事を通して自己実現をしたい」「常にキャリアアップ・スキルアップを心がけたい」などキャリア形成に関する項目が上位。働き甲斐を求めれば、多様なキャリアを実現できる就労環境が整った東京圏へと足を運ぶことも理解できる。その中で、注目したいのは、2020年度に県が女子学生を対象に行なった「働くことに関する意識調査」から、女子大学生の82.3%が愛知県内の職場で働きたい(44%)または働いてもよい(38.3%)と答えている。やりたい仕事があれば愛知県で就職を考えたい、地元志向の女子学生も多いことがわかった。そこで以下、3点にわたって質問。
Q:2013年度から全庁で取組んできた「あいち女性の活躍促進プロジェクト」も10年となり、これまで「製造業」が強い本県の特徴を踏まえながら、働く場における女性の「定着」と「活躍」の拡大に向けた施策を展開してきた。しかし、若年女性の東京圏への流出にはどうしても歯止めがかからない。
若年女性が東京圏へ転出している現状について、本県のこれまでの女性活躍に向けた取組を踏まえて、どのように考えているのか?
【県民文化局長】
本県では、2013年度に女性の活躍促進プロジェクトチームを発足して以降、「女性が元気に働き続けられる愛知」を目指して、「あいち女性の活躍促進サミット」の開催などによる女性活躍に向けた気運の醸成や、長時間勤務の縮減や男性の育児参加促進などによるワークライフバランスの推進など、様々な取組を実施してきた。そうした中、本県が女子大学生に対して行ったアンケートでは、将来働きたい業種について、回答が多かったのが「教育・学習支援業」、「医療・福祉」、「サービス業」等であり、本県の主要産業である「製造業」を、希望する方は少ないという結果になっている。これは製造業の現場では力仕事が多いといったイメージや、女性は理系より文系の仕事に向いているといった固定観念があることが影響しているものと考えている。
今後は、製造業においても、商品開発、マーケティング、広報等、様々な仕事があることを知ってもらうとともに、固定的な性別役割分担意識を解消し、性別にとらわれずに進路や就職先を考えてもらえるよう取り組んでいきたい。
Q:2015年度から創設している、女性活躍に意欲的に取り組む企業を認証し、社会的評価を高めることで、女性活躍に向けた具体的な取組を促す「あいち女性輝きカンパニー」には、2022年度までに1,263社が“女性が活躍できる企業”としてのお墨付きをもらっている。就職活動で企業にアンテナを張る女子大学生にとっては、女性に優しい企業が1,200社以上もあるというのは、耳よりな情報だと思う。そこで、「あいち女性輝きカンパニー」に関する情報を、就職活動を行なう女子大学生にどのように発信していくのか?
【県民文化局長】
本県では、女性活躍に取り組む企業や就職を考える女性を応援するために2015年度に開設した「あいち女性の活躍促進応援サイト」に「あいち女性輝きカンパニー」の認証企業名を掲載し、2019年度から認証企業を「業種」や「所在地」、「従業員規模」で検索できる機能を加えた。この検索ページは、サイト全体の閲覧数の46%と約半数を占めており、「あいち女性輝きカンパニー」への関心は高いと考えている。今年度は、新たに、「あいち女性輝きカンパニー」の女性の管理職比率や男女別平均勤続年数など、女性の活躍度合いを表す数値等を掲載するとともに、カンパニー各社からのメッセージを掲載するなど、その魅力を発信する場となるようサイトを充実していく。
さらに、女子大学生が「あいち女性輝きカンパニー」を取材して作成した動画を、サイトに掲載したり、女子大学生と「あいち女性輝きカンパニー」との交流会を開催する予定である。今後は、「あいち女性輝きカンパニー」各社の具体的な取組内容と、その職場でいきいきと活躍している女性の姿を女子大学生に知ってもらえるよう、情報発信にしっかりと取り組んでいく。
Q:本県には、実際に製造業から「若い女性の採用はしづらい」との相談が寄せられている。2022年度女性役員登用に向けた企業ワーキンググループからも、製造業というと男性の職場である、という性別意識(ジェンダーバイアス)による無意識の思い込み(アンコンシャスバイアス)があり、女子の採用に結びついていない可能性があるとの声もある。一般的に、製造業=男性の仕事であるというジェンダーバイアス(性別意識)から、製造業には女性の活躍する場がないという無意識の思い込み(アンコンシャスバイアス)が生まれているとすれば、まずはこの意識を払拭することが、製造業が強い本県としては1丁目1番地ではないか。そこで、モノづくり企業のイメージを変えていくことが必要だが、県としてどのように取組んでいくのか?
【県民文化局長】
本県の主要産業である製造業等の経営者からは、女性を採用したくても応募者が少なく採用できないといった声を聞いている。こうした現状を踏まえ、本県では、昨年度、県内3地域において、県・市・商工会議所と地元企業を交えて、中小企業の製造業等における女性活躍について、意見交換を行なった。そのうち、大府市にある製造業の企業からは、SNSを活用して女性の社長が自ら会社の取組を紹介するライブ配信を行ったり、「あいち女性輝きカンパニー」のロゴマークを掲載した横断幕を使って社員を募集した結果、ホームページの閲覧数が30倍に上がり、女性からの問い合わせが増えるなど大きな反響があった事例が紹介された。女性の人材確保に効果的な取組事例であり、今後も中小企業向けに開催する女性活躍促進セミナー等で広く紹介していく。
また、本県では、2021年度から、若い世代が、性別にとらわれずに進路や就職先を考えてもらえるよう、中学・高校・大学等に出向いてキャリア講座を開催している。講座では、女性がモノづくり企業で働く事例等を紹介しており、昨年度は、15の学校で2,823人に受講してもらい、「工業系の仕事は男性というイメージがあったが、性別は関係ないと思った。」といった感想ももらった。
今後も、女性の採用に効果的な取組事例や、製造業で女性が活躍している事例を積極的に発信し、モノづくり企業で活躍する女性がさらに増えていくように、しっかりと取り組んでいく。
【知事答弁】
本県は、20歳代前半の就職期にある女性の東京圏への転出が多いという状況となっている。このため、本県では、これまで若年層をターゲットとした愛知の住みやすさの発信や、UIJターン希望者への就労支援などと合わせて、「あいち女性輝きカンパニー」の認証制度や、女子中高生の理系分野への進路選択支援、女性起業家の育成など、女性が活躍できる職場づくりや就業機会の拡大に取り組んできた。このうち、「あいち女性輝きカンパニー」については、昨年度までに1,263社を認証して、「あいち男女共同参画プラン2025」に定める2025年度までの認証目標数1,200社を前倒しで達成。女性活躍の輪を拡げていくためには、今後も「あいち女性輝きカンパニー」の数を増やしていきたいと考え、今年度中に目標数をさらに引上げて県内企業に働きかけていく。
「あいち女性輝きカンパニー」に認証された企業を業種別にみると、本県は日本一の産業県ということもあり、製造業と建設業で認証企業数の半数近くを占めている。認証企業では、女性が使いやすい器具・設備等の導入や作業工程の見直しを行ったり、仕事と家庭の両立を支援する制度の導入などに積極的に取り組み、女性が働きやすい環境が整備されている。
今後は、本県のモノづくり企業においても、女性が活躍できる仕事がたくさんあることを、若い女性にもっともっと知ってもらえるよう、「あいち女性輝きカンパニー」のPR、その魅力発信に引き続きしっかりと取り組んでいく。
2. 愛知の温泉の現状と資源保護の取組について
古くから独自の温泉文化を形成してきた我が国では、しっとりと温泉情緒を満喫できる正統派の温泉を求める一方で、ドライブ気分で出かける立ち寄り湯やレジャー志向の日帰り温泉など、温泉ニーズも多様化している。温泉の楽しみ方はエトセトラでも、この“自然の恵み”
は限りある資源であることを忘れてはいけない。今、温泉ブームの側面で起こっていること、それは温泉の持続可能性が危ぶまれる“異変”が各地の温泉から報告されていること。異変とは、源泉の湯量の減少や湯温の低下などで、日本を代表する大分県別府温泉、北海道のニセコエリア、青森県弘前市嶽(だけ)温泉、長野県千曲市笹川温泉など全国各地の名だたる温泉から続々と報告され、源泉の枯渇にもつながりかねない一大事だと、天然資源である温泉の使い方に警鐘を鳴らしている。
国が定めた「温泉法」では、25度以上あればただの地下水でも「温泉」と認可されることから、1,000メートル地下では水温も約30度と確実に温泉を手に入れることができるために1,000メートル以上の大深度から温泉の湯脈を掘り当てる傾向にある。そして、そこに動力装置でお湯をくみ上げるので、自然と湧き出る自噴泉とは違い、人工的に湧出させることで、温泉を過剰に汲み上げれば自然の温泉収支バランスが成り立たなくなり、“枯渇”という最悪の事態をむかえることとなる。
振り返ること20年前。温泉開発で過剰な温泉のくみ上げから温泉の慢性的な不足をまねき、名湯長野県白骨温泉で入浴剤を添加していた温泉偽装問題が発覚したのを皮切りに、群馬県伊香保温泉や栃木県那須温泉でも入浴剤を添加したり、水道水や井戸水を沸かした温泉偽装問題が発生した。さらに衝撃は、本県でもすでに源泉が枯渇していた「吉良温泉」が水道水を使用していたにもかかわらず、パンフレットなどに天然温泉と刷り込み10年間も偽装していた事件。どれも温泉の使い過ぎで湧出量が減少して温泉資源が枯渇、天然温泉偽装問題へと発展。本県ではこの吉良温泉の温泉偽装問題を受けて、以後毎年1回、県内すべての源泉および温泉利用施設に立入調査をするとともに、10年ごとに温泉成分の再分析を指導してきた。
温泉ブームと温泉開発は天然温泉偽装問題の発覚後も止まることなく、20年経過した今、ふたたび湯量の減少や湯温の低下という、日本の温泉の存亡にかかわる深刻な事態をマスメディアは報じている。では、愛知の温泉の状況はどうなのか…
私自身、平成15年に全国各地で発覚した天然温泉偽装問題をうけ、本県の温泉の実態調査と今後どのように愛知の温泉を守っていくのか、その取組について本議会で質問した経緯がある。そこで再び、各地の温泉に異変が起きていると報じられる中、以下、愛知の温泉の現状について伺う。
Q:天然温泉偽装問題が発覚した平成15年から令和3年までのこの20年間の愛知県内の源泉総数と源泉利用状況、総湧出量の推移は?あわせてこの間の現状から、愛知の源泉の傾向をどのように解析しているのか?
【環境局長】
2003年度に114本であったものが、2021年度には135本となっている。この間に新設が29本、廃止が8本あり、差し引きで21本増加している。
この135本のうち、実際に利用されているのは93本であり、自噴で利用されているものは14本から9本に減少している一方、動力により汲み上げて利用されているものは68本から84本に増加している。
総湧出量は、2003年度に毎分18,504リットルあったものが、2021年度には毎分16,652リットルと約10パーセント減少している状況。
この減少について、温泉事業者に対して聞き取りを行ったところ、利用状況に応じて汲み上げる湯量を調整し、温泉資源の減少等によるものではないと捉えている。
Q:本県では吉良温泉の温泉偽装問題をうけて、この20年間、温泉事業者に対して年1回の立ち入り調査と、10年に一度の温泉成分の再分析を指導してきたが、愛知の温泉については源泉に変化はあるのか?
【環境局長】
本県で全ての温泉事業者を対象に年に一回実施している立入調査において、湯量、温度のほか、10年毎に事業者が実施する温泉成分再分析の結果などについて聞き取りを行っているが、この20年間において、湯量や温度、成分などに大きな変化は見られない。また、温泉事業者から、温泉成分の変化や源泉の枯渇に関する相談なども受けていないことから、本県においては、源泉に目立った変化はないものと考えている。
温泉ブームと温泉開発が進む中、温泉法に基づく温泉の掘削や動力装置には都道府県知事の許可が必要となり、本県では、温泉の掘削申請などについて、学識経験者で構成される愛知県環境審議会温泉部会の意見を聞いて許可している。
Q:温泉は限りある資源であり、その保護は大きな課題だが、昨今の掘削許可の申請状況は?
【環境局長】
ここ20年間における掘削許可の総申請件数は49件であり、不許可としたものはない。この間、最も多かった2003年度には9件の申請があったが、全くなかった年度もある。ここ数年は、年間0から2件程度で推移しており、昨年度の申請は2件だった。また、新たな掘削による周辺の源泉の湯量の減少や温泉成分の変化は確認されておらず、温泉資源の保全上、特に問題がなかった。
国の方で温泉資源保護の対策を円滑に進めるためには、具体的かつ科学的な指針を作成すべきであるとの考えのもと、平成20年12月に環境省が温泉資源保護に関する指針案を提示。過剰な汲み上げなどで温泉が枯れたり、地盤沈下が起きたりするのを防ぐために、知事が新規掘削を原則禁止する区域の設定などの考え方を示したガイドラインをまとめて、平成21年3月に各都道府県に通達している。そのガイドラインをうけて、本県では掘削等の原則禁止区域としては地盤沈下防止の観点から『名古屋市内および尾張西部等の地域』において、一定の口径を超えた井戸は原則設置できないこととなっている。また、既存源泉から500メートルを超えないと掘削許可申請も出せないことになっている。
全国各地の温泉で湯量の減少、湯温の低下など「源泉の疲弊」が相次いで報告されている中で、温泉は自然が与えてくれた限りある貴重な資源。
Q:愛知の温泉資源を守る立場の当局として、持続可能な温泉に向けての今後の取組についてうかがう。
【環境局長】
温泉は貴重な資源であり、将来にわたって持続的にこの資源を確保できるよう、その適切な利用を図る必要がある。本県では、温泉事業者による湯量、温度等のモニタリングの徹底を図り、そこから得られた情報を蓄積することで、各源泉の状態の把握に努めているところであり、今後、大きな変化の兆候が見られた場合には、直ちに保全策を検討することとしている。
今後も温泉資源の保護と適正な温泉利用の確保に向けて、温泉の新規の掘削許可や汲み上げ用の動力装置の設置申請についても、学識経験者等で構成される環境審議会温泉部会の専門的な見地に基づく意見を聴きながら、慎重に審査していく。
3. 高齢化する県営住宅への「単身学生入居」について
昭和30年~50年代にかけての高度経済成長期、急増する人口に住宅不足を補うために次々と建てられた公営団地。かつて盆踊りや夏祭りの団地をあげての行事には、近隣町内からも大勢が参加し、コミュニティ活動が盛んだった。しかし今では、築40年、50年と経過した建物の老朽化に空き部屋の増加、何よりも入居者の高齢化により、団地内の地域社会としての活力が失われつつある。本県県営住宅も例外ではない。本県の県営住宅総戸数は、2023年4月1日現在で57,049戸。その内、入居戸数は44,517戸で入居率は78.1%。契約者の年齢層をみると、65歳以上の方が契約者となっている割合は51.8%で、半数を上回っている。さらに、単身で入居している高齢者も年々増加し、65歳以上の単身者入居率はこの4年間で3.4%増えて23.4%に。70代、80代の一人暮らしの高齢者も見受けられ、問題視される「孤立死」への不安が頭をよぎる。
本来、公営住宅では、共同生活を営む上で入居者が自主的に運営する「自治会」の役割が大きいが、この自治会も入居者の高齢化で、自治会役員の担い手不足、団地内の清掃や草刈りなど地域コミュニティの維持困難など、自治会活動が停滞し始めている住宅も現れている。
このように公営住宅の自治会活動の滞りが課題となっている中で、今、近隣大学の学生に格安家賃で入居してもらい、自治会活動に参加して地域コミュニティの手助けをしてもらう取組が東京都の都営住宅を始め、全国の自治体で広がっている。
こうした公営住宅への学生の入居は、公営住宅の目的である住宅に困窮する低額所得者の入居が阻害されない範囲内で、地域の実情に対応した公営住宅の弾力的な活用を図るための「地域対応活用計画」に基づく「目的外使用」として認められ、自治体と大学が協定を締結して取組を実施している。
東京都では2022年に近隣の大学と協定を締結。入居の条件は自治会へ加入して活動をすること。学生が清掃や草むしりなどに参加するほか、月1回、資源ごみの回収にもあたっているということ。学生たちが自治会活動に参加することで、地域コミュニティが活性化され、住民にも好意的に受け止められ、世代を超えた交流の中で人の役に立てるのもまた楽しい、と学生達は口をそろえる。
学生にとっては、一般の住宅よりも安い家賃で大学の近くに居住でき、自治会は若い力を発揮してもらえるので互いにウイン・ウイン!と、各地で大学と協定を結ぶ自治体の評価も高い。
東海4県内では三重県のほか、名古屋市、四日市市でも学生が入居できるよう大学と自治体の協定締結がなされ、例えば三重県では、鈴鹿大学・鈴鹿大学短期大学部と、2020年3月に協定を締結している。対象となる県営住宅は津市河芸(かわげ)町にあり、入居者は5割を割り、高齢者が多く、空き家は4、5階など高層階に目立つ。駅からも遠くスーパーも近くにないため、自動車を所有していないと生活には不便で敬遠されがちな物件。
一方、鈴鹿大学の学生にとっては、大学周辺に賃貸物件がなく、下宿探しにも苦労しているとの声を聞き、河芸町のこの県営住宅は大学から300メートルの立地だったことで、県から大学へ県営住宅への単身学生の入居を持ち掛けたところ、大学側に歓迎されてスムーズに決まったという。現在は運動部の学生が入居し、自治会活動にも貢献。三重県では、空き家の状況をみて学生の入居枠を増やしていきたいという。
Q:住民の高齢化や空室の増加で公営住宅の自治会活動の停滞が課題となる中、全国で地域のコミュニティ活性化が期待され、大学生の県営住宅への入居について本県でも検討すべきと考えるが?
【建築局長】
県営住宅は、公営住宅法に基づき、住宅に困窮する低額所得者に対して、低廉な家賃で賃貸することを目的として、県が国の補助を受けて建設している。 また、県営住宅の管理は、公営住宅法に基づく管理代行者である愛知県住宅供給公社が行っているが、住宅共用部の清掃などについては、入居者が組織する自治会がその役割を担っている。
近年、公営住宅の自治会活動については、入居者の高齢化による担い手不足が全国的な課題となり、一部の自治体では、地域の実情に対応した公営住宅の弾力的な活用を可能とする、国の「地域対応活用」の手法を用いて、学生が公営住宅の空き住戸に入居し、自治会活動に参加する取組を実施している。
本県の県営住宅においても、入居者への満足度調査の回答の中で、「高齢者が多く、敷地内の清掃や草刈りが大変だ」といった意見があり、高齢化が進む県営住宅において、本来の対象者の入居を阻害しない範囲内で学生の入居を認めることは、自治会活動の担い手確保による活性化につながるものと考えている。
こうした学生入居の取組を進めていくためには、学生に過度な負担をかけず、学生が主体的に自治会活動に参加できる環境づくりや、地域活動への参加意欲のある学生の継続的な確保が重要。そこで、まずは、大学が近接し、空き住戸がある県営住宅の自治会に対して、学生受け入れの意向と学生に期待する役割の調査を行うとともに、大学側に対しては、県営住宅への入居のニーズの有無などについて聞き取りを行なう。
その上で、県住宅供給公社と連携し、他の自治体の事例も参考にしつつ、「地域対応活用」による学生入居について具体的な検討を進めていく。
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